何週間もリサーチを重ね、機能、デザイン、口コミ、価格、すべてを比較検討して、ついに見つけ出した、あなたにとって「理想の洗濯機」。
ワクワクしながら、配送日を待つあなた。
当日、軽快なチャイムと共に、配送業者のトラックが到着します。 「新しい洗濯機だ!」と心躍らせながら、作業員の方々を家に招き入れる。
しかし、玄関先で洗濯機の実物を見た作業員の方の顔が、ふと曇ります。 メジャーを取り出し、何やら深刻な顔で廊下やドアを測り始める。
そして、あなたに告げられる、あの非情な一言。
「すみません、お客様。これ、通りません…」
頭が、真っ白になる。 「え、嘘でしょ?ちゃんとサイズは見たはずなのに…」
キャンセル料、再注文の手間、また何週間も待たなければならない絶望感…。
信じられないかもしれませんが、これは稀な話ではありません。 最新の洗濯機が、多機能化・大容量化するにつれて、毎年、日本のどこかで数え切れないほど繰り返されている、“家電購入における最大の悲劇”なのです。
しかし、ご安心ください。
この記事は、そんな悲劇の主人公に、あなたがなることを100%防ぐための、「完璧な防御マニュアル」です。
必要なのは、1本のメジャーと、ほんの少しの時間だけ。 この記事にあるチェックリストを一つずつクリアしていけば、あなたは1ミリの不安もなく、最高の笑顔で、新しい洗濯機を家に迎え入れることができます。
さあ、後悔しないための、最後の、そして最も重要な準備を始めましょう。
(注:本記事の内容は、安全な設置と搬入のための情報提供を目的としています。実際の作業、特に電気工事や水道工事が伴う場合は、必ず専門の資格を持つ業者にご依頼ください。)
【結論】チェックは2段階!「最終目的地」と「そこまでの旅路」を測り尽くせ
「採寸」と聞くと、面倒で複雑に感じるかもしれません。 しかし、やるべきことは、驚くほどシンプルです。
チェックすべきなのは、たったの2つのエリアだけ。
Part 1:【最終目的地】編 → 洗濯機の「設置場所」を完璧に採寸する
防水パン、蛇口の高さ、排水口の位置…あなたの新しい洗濯機が、これから約10年間、毎日を過ごすことになる「家」そのものを、隅々までチェックします。
Part 2:【そこまでの旅路】編 → 家の入口から設置場所までの「搬入経路」をシミュレーションする
玄関、廊下、階段、エレベーター…洗濯機があなたの家に入り、設置場所までたどり着くための「旅の道のり」に、障害物がないかを確認します。
この2つのエリアさえ完璧に把握すれば、失敗はありえません。 では、具体的な採寸方法を、図解と共に見ていきましょう。
【Part 1:最終目的地編】設置場所チェックリスト6項目
まずは、洗濯機が最終的に置かれる「設置場所」です。 メジャーを片手に、一つずつ確認していきましょう。
①【基礎】防水パン(洗濯パン)の内寸
- これは何? 洗濯機の下に置かれている、プラスチック製の受け皿のことです。万が一の水漏れから、床を守る重要な役割があります。
- なぜ測るの? 洗濯機の脚が、この防水パンの「内側」に、四隅ともしっかりと収まらなければ、安全に設置することができません。
- 見落としがちな罠: 洗濯機本体のカタログスペック(幅×奥行)だけを見て、「あ、入るな」と判断するのは危険です。重要なのは、本体の底にある「脚」の幅と奥行きです。製品仕様書には「本体寸法」とは別に「脚の寸法」や「必要防水パン内寸」が記載されているので、必ずそちらを確認しましょう。
②【本体】洗濯機を置くスペース
- これは何? 洗濯機本体が、壁や他の家具に接触せずに収まるための空間です。
- なぜ測るの? 洗濯機は、運転中に熱や湿気を発します。壁にピッタリとくっつけて設置してしまうと、熱がこもって故障の原因になったり、湿気で壁にカビが生えたりする可能性があります。
- 測り方: 洗濯機を置きたいスペースの幅と奥行きを測り、カタログに記載されている洗濯機本体の寸法+左右・背面にそれぞれ5cm以上の余裕があるかを確認します。
- 見落としがちな罠: 防水パンの上だけでなく、洗濯機の上部も確認しましょう。壁に出っ張りや棚などがあると、背の高い洗濯機は置けない場合があります。
③【最重要トラップ】蛇口の高さと位置
- これは何? 洗濯機に給水するための水道の蛇口です。
- なぜ測るの? これが、設置不可の原因No.1と言っても過言ではありません。蛇口が低い位置にあると、購入した洗濯機のフタや天面に物理的にぶつかってしまい、設置ができません。
- 見落としがちな罠: 蛇口の「高さ」だけでなく、「出っ張り」にも注意が必要です。壁から蛇口が大きく飛び出していると、その分、洗濯機を壁際に寄せられず、防水パンからはみ出してしまうことがあります。
④【出口戦略】排水口の位置
- これは何? 洗濯後の水を排出するための、床にある排水口です。
- なぜ確認するの? 排水口の位置によって、排水ホースの取り回しが変わります。無理にホースを曲げたり、長さが足りなかったりすると、水漏れや排水エラーの原因になります。
- 確認点: 防水パンの「右奥」「左奥」「真下」など、どこに排水口があるかを確認します。洗濯機の排水ホースは、通常、本体の左右どちらかから出すことができますが、排水口が対角線上にあると、ホースの長さが足りなくなる可能性があります。
- 見落としがちな罠: 排水口のフタやエルボ(L字の接続部品)が、洗濯機の脚を置きたい位置に干渉しないかも、併せて確認しておきましょう。
⑤【扉の自由】フタ・ドアの開閉スペース
- これは何? 洗濯物を出し入れするための、フタやドアが動く範囲の空間です。
- なぜ確認するの? 特にドラム式洗濯機で重要なポイント。ドアが壁や洗面台にぶつかって90度までしか開かないと、大きな洗濯物の出し入れが非常にストレスになります。
- 確認点:
- 縦型の場合: フタを全開にした時に、上の棚や窓、給湯器のリモコンなどにぶつからないか。
- ドラム式の場合: ドアを全開にした時に、通路を塞いでしまわないか、壁や家具にぶつからないか。ドアの「右開き」「左開き」は、壁の位置やあなたの利き手を考慮して、最適な方を選びましょう。
- 見落としがちな罠: ドアを開けた先に、脱衣カゴなどを置くスペースがあるかもシミュレーションしておくと、日々の使い勝手が格段に向上します。
⑥【生命線】コンセントとアース線の位置
- これは何? 洗濯機の電源を取るためのコンセントと、漏電を防ぐためのアース端子です。
- なぜ確認するの? 洗濯機は消費電力が大きく、水回りで使用するため、安全に関わる非常に重要なポイントです。
- 確認点:
- 洗濯機本体の電源コードが、無理なく届く位置にコンセントがあるか。
- アース端子が付いているコンセントか。(古い物件だと付いていない場合もあります)
- 見落としがちな罠: 延長コードやテーブルタップの使用は、絶対に避けてください。 漏電や発熱、火災の原因となり、非常に危険です。メーカーも固く禁止しています。もしコンセントが遠い場合は、電気工事業者によるコンセントの増設工事が必要です。
【Part 2:そこまでの旅路編】搬入経路チェックリスト4項目
さあ、「最終目的地」の安全は確保できました。 次は、あなたが洗濯機になったつもりで、玄関から設置場所までの「旅路」に危険がないか、シミュレーションしていきましょう。
重要なのは、カタログに記載されている洗濯機の「本体寸法」に、必ずプラス10cmの余裕を持たせること。 これは、作業員の方が手を入れて運んだり、角を曲がったりする際に必要な「あそび」のスペースです。
①【最初の関門】玄関ドア
- ミッション: 家の入口を突破せよ!
- 測る場所: ドアを90度に開いた時の「開口部の幅」と「高さ」。
- 敵(罠): ドアノブ、蝶番、郵便受け。これらの出っ張りを考慮しないと、あと数ミリで通らない、という事態に。ドアを外せる構造なら、一時的に外すことでクリアできる場合もあります。
②【最大の難所】廊下と曲がり角
- ミッション: 狭い通路と、見通しの悪いコーナーを攻略せよ!
- 測る場所: 廊下の最も狭い部分の幅。
- 敵(罠): 曲がり角(クランク)です。直線は通れても、角を曲がる際に、洗濯機の「幅」ではなく「対角線の長さ」が、廊下の幅より大きいと、物理的に曲がることができません。特に、大きなドラム式洗濯機では、この罠にはまるケースが非常に多いです。
③【高層階の命綱】エレベーター
- ミッション: 上層階へのリフトを確保せよ!
- 測る場所: エレベーターのドアの開口部の幅と高さ、そして内部の奥行きと高さ。
- 敵(罠): エレベーターのドアは通っても、中で斜めにしないと本体が収まらないことがあります。また、手すりなどの内部の突起物にも注意が必要です。
④【最終ボス】階段
- ミッション: 立体的な障害を乗り越えよ!
- 測る場所: 階段の幅と、天井までの高さ。
- 敵(罠): 手すりがあると、その分、有効な幅は狭くなります。そして最大の敵が、Uターンするような「踊り場」です。天井が低かったり、踊り場が狭かったりすると、洗濯機を回転させることができず、搬入不可となる最難関ポイントです。
【お助けQ&A】もしサイズが合わなかったら?解決策と裏ワザ
慎重に測った結果、「どうしてもサイズが足りない…」と判明した場合でも、諦めるのはまだ早いかもしれません。いくつかの解決策が存在します。
Q1. 防水パンが、置きたい洗濯機より小さいです…
A1. 脚が防水パンのフチにギリギリ乗ってしまうような場合ですね。「かさ上げ台」や「洗濯機スライド台」という製品があります。これらは、洗濯機の脚をパンの外側の床に設置しつつ、本体をパンの上に持ち上げる(またがせる)ことができる便利なアイテムです。価格は5,000円~15,000円程度です。
Q2. 蛇口が低くて、どうしてもフタが当たりそうです…
A2. これはプロの出番です。「壁ピタ水栓」という、壁からの出っ張りが非常に少ない特殊な蛇口に交換する工事を行えば、高さを約10cm~12cm程度稼ぐことができます。ただし、水道工事が必要となるため、費用は部品代と工賃で15,000円~30,000円程度かかります。賃貸物件の場合は、必ず大家さんや管理会社の許可が必要です。
Q3. どうしても搬入経路が通りません…
A3. これが最終手段です。玄関や階段がダメでも、リビングの大きな窓やベランダからなら入る、という場合があります。その際は、引越し業者が使うようなクレーン車で、洗濯機を吊り上げて搬入する「クレーン搬入(吊り上げ搬入)」という方法があります。ただし、これは特殊作業となるため、数万円(3万円~8万円程度)の追加料金がかかります。家電量販店によっては提携業者がいるので、購入時に相談してみましょう。
まとめ:1時間の採寸が、10年の安心を作る。採寸チェックシート
長い旅、お疲れ様でした。 最後に、あなたがこれからの採寸で絶対にミスをしないよう、最強の武器「採寸チェックシート」をご用意しました。 ぜひ、このページをスクリーンショットするか、メモに書き出して、メジャーと共に現場へ向かってください。
【洗濯機 設置&搬入 最終チェックシート】
□ Part 1:設置場所
- ① 防水パンの内寸: 幅[__]cm × 奥行[__]cm
- ② 設置スペース: 幅[__]cm × 奥行[__]cm (本体+10cmの余裕あり?)
- ③ 蛇口の高さ: 床から[__]cm (購入機種の全高より高い?)
- ④ 排水口の位置: [ 右・左・中央・真下 ]
- ⑤ ドアの開閉: [ 開閉スペースに問題なし・要確認 ]
- ⑥ コンセント・アース: [ 位置OK・アース端子あり ]
□ Part 2:搬入経路(最も狭い場所を測る)
- ① 玄関ドアの幅: [__]cm
- ② 廊下の幅: [__]cm
- ③ エレベーター: ドア幅[__]cm × 内部奥行[__]cm
- ④ 階段の幅: [__]cm (曲がり角は特に注意!)
洗濯機選びは、どうしても最新機能やデザインに目が行きがちです。 しかし、どんなに素晴らしい機能も、あなたの家に無事に設置できなければ、絵に描いた餅。
メジャーを片手に行う1時間の努力が、これからの10年間の快適な洗濯ライフを約束してくれます。
測るは一時の手間、測らぬは一生の後悔。
さあ、すべての準備は整いました。 自信を持って、あなただけの最高のパートナーを選びに行きましょう!
→ 採寸が完了し、設置できることが確認できたら、もう一度「洗濯機の選び方 完全ガイド」に戻って、最終決定を!


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